これは一種の観念の洗い出しと認識変容のトレーニングを兼ねている優れた技法だと考える。
特定のポジティブな文脈で用いられている言葉を観想(深く意識を集中)することによって、
その言葉と私との間で個人的な関係性を結び直すというような認識だ。
ジョン・マクドナルド氏は理知的でどちらかとえば客観的に、法則性のもたらす結果について誠実に記述している。
こんにち、多く愛読されているいわゆる”引き寄せの法則”や”成功哲学”にまつわる書籍は、
かなり主観に寄っていて、参考になる人とまったくそうでない人とに分かれてしまう。
『運命の貴族となるために/マスターの教え』で授かることのできる知識は至ってシンプルだ。
これまで見てきた通り
・人間の心は散漫なので、確固たる目標を立てる
・達成可能な目標を立てて、それに向かう
どんなものであれ、関心を抱いた対象に生命力が移転されるので、その対象を厳選する
・現実にリアクションするのではなく、まず自分の心に達成したときの目標を持ち、それを現実に焼き付ける
・現実的な場面で自分が何をしているかは関係ない。内的な心がどう働いているか。
最終の項で言葉そのものから力を引き出す、というような事柄を述べて単語リストを列挙して終わっている。
文字通りその人が目標を達成するのに必要なことは、あとは言葉から学ぶのである。
その意味を自分の中で反芻して内省を深めることで、その単語が生きる文脈が自ずと浮かび上がってくる。
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本編ではマスターが次にように述べる
「私からではなく、私のことばから学んでください」
「私への先入観や印象は取り払ってください」
「私もあなたと全くおなじ人間です。ただやり方を教わってそれを使ってるだけです」
昨今の影響力のある人間とそうでない人間に分かれているように見える社会構造は、
これとはまったく真逆のメッセージを発している。
「私のことを見てください」
「成功には特殊な生まれやスキル、財産が必要」
「できる人とそうでない人がいるので、後者は前者に盲目的に従ってください」
これは宇宙的な原則とは大幅にズレている。
今までもそしてこれからも”うまくいくためにはどうするか”という方法論は無数に出てきたし、出てくるだろう。
根本的なところで履き違えてしまうと、いかに方法論が優れていてもその人が欲しているものは手に入らない。
そもそも何を欲しているかを認識するというスタート地点にすら立てないかもしれない。
かなり古い本だが私は現世的な事柄を達成するために読むべき本として、この一冊があれば十分だと思っている。
今後この切り口であたらしい本や”成功者の言葉”や方法論をあれこれ取り上げることはない。
訳文に関しては、下記のブログがかなり深く考察してリライトの提言を行なってくれている。
紙面の都合もあるが、訳者の認識によって表現にかなり差が生まれてしまう。
原文が平易なためかなり突っ込んだ訳し方をしないと難しいという面もあるようだ。
上記のリンク先と日本語訳されている書籍をあわせて読みながら、
そこで得られた知見をぜひ実生活ですぐに試していって欲しい。
付録↓
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